マウスやキーボード、モニターといった毎日使うデバイスは、作業効率だけでなく身体の負担にも大きく影響します。特にエンジニアやデザイナーといった長時間のデスクワークを要求される人は、手首や肩、腰などに問題を抱えている人も多いと思います。

作業効率の向上と身体的負担の軽減のために、これまでさまざまなマウスを試してきました。その中でも、今回レビューする「Kensington SlimBlade Pro」は、身体への負担が少なく、デザイン性や操作性にも優れた、デザイナーやエンジニアにおすすめのトラックボールマウスです。

これまでのマウス遍歴

まずは、これまでのマウス遍歴から。

最初は、PCに標準で付属していた有線マウスを使っていましたが、長時間の使用で手首が疲れて肩が凝るうえ、デスク上のものにもよくぶつかるため、省スペースで疲れにくいマウスとして「Kensington オービットオプティカルマウス」を購入しました。

初めてのトラックボールマウスは、親指ではなく人差し指や中指で操作するこのトラックボールマウスでした。スクロール用のホイールが付いてないのですが、左右ボタン同時押しとボールの回転でホイールを代用します。

手首や肩が疲れにくく省スペースで使えるうえ、他人とは違うデバイスを使う優越感もあり、非常に満足度の高いマウスでした。しかし、トラックボールマウスの魅力に気づくと、さらにその先を目指したくなるもの。そこで次は、親指トラックボールの定番、「Logicool M570」を購入し、ここからが、私の親指トラックボール時代です。

そこからは規定通り、「Logicool M575」を経て、現行モデルの「Logicool ERGO M575SP」に辿り着きます。

Logicool ERGO M575SPは、はっきりいって完成したトラックボールマウスです。トラックボールマウスを使ってみたいって人には反射でこれを勧めておけば良いです。

私もほとんど満足していたのですが、マウスの角度が自分には少しだけ浅く、手首を内側に捻る姿勢に少し疲労感を感じてきました。そこで、3Dプリンターで角度調整マウントを作成。

5°単位で何パターンか試してみて、自分に最適なマウントができたところで、マウス探訪の旅は終焉を迎える…はずでした。

去年から効率性を向上させるためデスク環境を再構築し始め、現在は、解像度の異なる3つのモニター(MacBook Pro、ウルトラワイドモニター、4Kモニター縦置き)を横に並べて作業をしています。しかし、徐々に親指に鈍い疲れを感じるようになり、ポインターの移動量が多くなってきたのが原因ではないかと考えました。

そこで、それを改善すべく導入したのが、今回レビューする「Kensington SlimeBlade Pro」です。

開封

箱のデザインはいたってシンプル。

蓋を開けると可愛いボールが顔を覗かせます。

内容物は以下の4点。

  • トラックボールマウス本体
  • USB-A to Cケーブル
  • USB-A to C変換端子
  • マニュアル類

USBケーブルはメッシュで頑丈そう。変換端子がついてるのも親切。

外観

感性は人それぞれだけど、SlimBlade Proは自分史上、最も美しいマウスです。洗練されたシンプルなデザインで、特にAmazon限定モデルは、標準モデルの赤のボールではなく本体に合わせたグレーのボールが採用されており本当に美しい。

また、最近はホワイトモデルも登場しているので、デスク環境を白で揃えたい人にもおすすめです。

まずはM575とのサイズ比較。

SlimBlae Proはかなり大きい。しかし、高さを抑えたフラットな形状なので、デスク上での存在感は控えめで圧迫感はありません。そもそも、トラックボールマウスは移動させずにその場で操作するため、必要なスペースはマウス本体の面積だけであり、ここでの大きさの差はほとんど影響しません。

左右対称のデザインなので、左利きでも使えるのもメリット。重さは約300gあるため持ち運びには適していません。

次は四方向から見てみましょう。

前面。メンダコみたいでかわいい。

背面にはUSB-C端子。PCとの有線接続とマウス本体の充電に使用します。

SlimBlade Proは、「Bluetooth」、「2.4GHzワイヤレス」(USBドングルが付属)、「USBケーブル」の3つの接続方法に対応しており、左側面には、これらの接続先を切り替えるスイッチが搭載されています。

私は、2.4GhzワイヤレスでWindows PCに、BluetoothでMacBook Proに接続して、使い分けています。

右側面にはDPI切り替えスイッチ。押すごとにDPIが4段階で切り替わり、ポインターの移動速度が変わります。いまが何段階目かは、押した時のLEDの点灯回数で確認できます。

段階(LED点灯回数)DPI移動速度
1(LED1回点灯)400 dpi遅い
2(LED2回点灯)800 dpiやや遅い
3(LED3回点灯)1200 dpiやや早い
4(LED4回点灯)1600 dpi早い

トラックボール

左がSlimBlade Proのトラックボールで直径55mm、右がM575で直径34mm

一般的なトラックボールと比べてサイズが大きく重量感もあります。勢いよくボールを回転させると、その重みを活かして感性が働き、遠い位置へのカーソル移動もスムーズに行えます。マルチディスプレイ環境やウルトラワイドモニターの人には特におすすめです。

遠くに移動させるときは勢いよくボールを回転させ、細かい調整が必要な時は、人差し指と中指で慎重に動かします。親指トラックボールとは違い、人差し指と中指の2本の指でボールを動かすため、より安定した繊細な操作が可能です。

ボタン

SlimBlade Proには4つのボタンが配置されています。

私の操作方法は以下の通り。

  • 左下ボタン(1):親指
  • 右下ボタン(2):小指(の根本)
  • 左上ボタン(3):人差し指
  • 右上ボタン(4):薬指

小指の指先が右上ボタン(4)に少しかかるので、右下クリック(2)は小指の根本で押すイメージ。左上クリック(3)がしんどいというレビューも見かけたけど自分は全然気になりません。

さらに、上下、左右で同時押しにも対応。

同時押しには、左クリック(5:左下と左上の同時押し)と右クリック(6:右下と右上の同時押し)、下クリック(7:左下と右下の同時押し)、上クリック(8:左上と右上の同時押し)の4つの組み合わせがあります。つまり、すべてで8パターンのクリックが実現できます。

そして、公式ツールであるKensingtonWorksを使うと、ボタンの割り当てを変更できます。

上記は私の設定値。

「左下クリック」と「右下クリック」は初期設定のまま「左クリック」と「右クリック」を割り当て。「中央クリック」(通常のマウスのホイールクリック)は、左クリックと右クリックの間って感覚なので、「下クリック(左下と右下の同時押し)」に割り当て。

「左上クリック」と「右上クリック」には、「バック(戻る)」と「フォワード(進む)」を設定。「上クリック(左上と右上の同時押し)」は、私はどうしても同時押しにならないことがあったため、割り当てを断念しました。

マウスを使うとき、左手はキーボードの左側をカバーするので、その時にノーマークになるのがキーボードの右側。そこで、特に使うであろう「Backspcase」と「Enter(Return)」を「左クリック(左上と左下の同時押し)」と「右クリック(右上と右下の同時押し)」に割り当て。これにより、マウスで領域選択して左手でコピペした後、必要に応じてマウスでBackspaceやEnterなどができるようになり、コピペ性能が格段に向上しました。マウスにコピーとペーストも割り当てる論もありそうですが、それだと右手が忙しくなるので、左右均等に負荷分散させる方が良いとの判断。

なお、ボタンのカスタマイズはアプリごとにも行えるため、ブラウザ用とかエディタ用、動画視聴用など、用途に合わせたカスタマイズが可能です。

ポインター

KensingtonWorksでは、ポインターの速度や加速のカスタマイズも可能です。

ここはもう個人の好みなのでご自由に。私はモニターを横に3つ並べていて、ポインターの移動量が多くなるので、必然的に速度は早めになります。DPIは2段階目(800dpi)。

スクロール

SlimBlade Proは、ホイールがついていないマウス。これだけで購入を躊躇する人もいそうだけど、そこはご安心を。ボールの回し方で自然なスクロールが行えます。

スクロール方法は、ボールを水平に回転させること。これにより、スクロールを実現しています。感覚としては、縁の部分を横から撫でてあげる感じ。自分は薬指でスクロールさせています。人差し指と中指でつまんで捻る人もいるみたいだけど、それは自分にはちょっと難しかった。

スクロール時には「カチカチ…」という感触フィードバックがあり、これがまた非常に心地よい。ミーティング中に意味もなく無意識にカチカチさせてしまいます。

スクロールの速度や方向もカスタマイズ可能。

特に違和感もなかったのでデフォルトのままで使用。

身体的負担

手首や親指の負担軽減を目的として購入したマウスなので、その点での評価を。

まず、手首や肩、親指の負担は軽減されました。今のところ、長時間の使用でも疲れにくく、快適に作業を続けることができます。

マウスのお供にリストレストを使う人も多いと思いますが、私は不要でした。リストレストを使うと手首の位置が高くなり指先でマウスを操作する形になります。私は指先だけではなく指全体で操作することで安定性が得られているので、リストレストを使うことで逆に使いにくくなりました。

メンテナンス

SlimBlade Proに限らず、トラックボールマウスの宿命として、定期的にメンテナンスしないとボールの滑りが悪くなります。

メンテナンスはとても簡単。本体部分はボールとの接点を軽く拭き取り、ボールは潤滑剤を軽く吹きかけて拭き取るだけ。以前はキムワイプで吹いていた時期もありますが、キムワイプだと傷がつくという情報を見かけたので、現在はクリーニングクロスを使用。

潤滑剤もいろいろありますが、まずは定番のボナンザを使うのがよいと思います。

M575などのボールが小さいトラックボールマウスに潤滑剤を使った場合、滑りが良くなりすぎて操作しにくくなることがありましたが、SlimBlade Proの場合は動き出しに少しの重さを感じるので、滑りすぎるという感覚もありませんでした。

まとめ

「Kensington SlimBlade Pro」レビューのまとめです。

ここが素晴らしい
  • 重めのボールで感性が働くため、ポインターの移動が楽
  • 人差し指と中指の2本で操作するため、親指だけで操作するより細かい操作が可能
  • スクロール時の「カリカリ…」というフィードバックが快感
  • 手首や肩への負担が少ない(トラックボール全般)
  • 通常のマウスよりも省スペース(トラックボールマウス全般)
ここがイマイチ
  • 人によるが、慣れるまで時間がかかる
  • ボタンの同時押しが少し難しい
  • 定期的なメンテナンスが必要(トラックボール全般)
  • ゲームには使えない(トラックボールマウス全般)

Kensington SlimBlade Proは、デザイン性、操作性、カスタマイズ性のバランスが取れた優秀なトラックボールマウスです。特に、長時間の作業で手首や肩の負担を感じているエンジニアやデザイナーは、一度試してみる価値があります。

マウス探しの旅も、ついに終着点にたどり着いた感もあります。ぜひみなさんにもこのマウスを体験してもらいたいです。